ユ・ヨンソクは、言わずと知れた? マイ推し俳優のひとりである。
加えて、配信当時からタイムリー視聴していた人たちの評判もかなり良かった。
「これは期待できそう」と思い、全話配信完了を待って、一気見する気満々で見始めたのが、2026年制作の韓国ドラマ『シン・イラン法律事務所 〜真実は、あの世からやってくる!?~』である。
幽霊が見える。
未練を残した死者が現れる。
その願いをかなえて成仏させる。
こうして並べると、設定自体はかなりシンプルなおとぎ話である。
でも韓国ドラマは、ときどき、その“王道設定”をていねいに作り込み、きっちり人の感情を動かす作品に仕上げてくる。
この『シン・イラン法律事務所』も、まさにそんなドラマだった。
物語の主人公は、霊が見えるようになってしまった弁護士シン・イラン。
彼のもとには、成仏できずに現世をさまよう幽霊たちが次々と現れる。
家族に誤解を解きたい人。
自分を陥れた相手に真実を知らしめたい人。
最後にもう一度、大切な人へ思いを伝えたい人。
シン・イランは、法律事務所の仲間たちとともに、その願いを叶えながら、彼らを天国へ送り出していく。
1〜2話完結型で進んでいく、ヒューマンファンタジー仕立てのドラマだ。
設定だけ聞くとかなりシンプル。
でも、この“シンプルなおとぎ話”を、ちゃんと毎回入り込めるドラマとして成立させていたのが、この作品の強さだったと思う。
そして最大の見どころは、やはりユ・ヨンソク。
彼が演じるシン・イランは、幽霊に憑依されることで人格や口調が次々と変わっていくのだが、その七変化ぶりが本当に見応えがある。
女子高生。
元反社の男性。
認知症の老人。
小学生男子。
などなど。
そして最後には、まさかの犬。笑。
しかも単に“それっぽく”演じるのではなく、憑依前に登場していた幽霊役俳優の動きや声色まで、かなり細かく再現している。
「あ、今ほんとにこの人乗り移ってる感じする」と思わせる説得力があるのだ。
推しだから多少の贔屓目はあるのかもしれないが、それを差し引いても、ほんとうに魅力的な俳優だと思う。
このドラマを見ながら、以前ソウルで観たミュージカル『ヘドウィック』でのヨンソクの妖艶な姿を思い出していた。
ユ・ヨンソクという俳優は、“役柄によってまるごと空気を変える”ことに、とても真摯に向きあい、それをきちんと実現できる力量と華を持ったスターでもある。
今回のシン・イランも、コミカルさと切なさを行き来しながら、憑依によって別人へと切り替わる難しい役どころを、実に軽やかに成立させていて、その表現力をかなり堪能できた。
さらに、このドラマ、とにかく出演者全員が芸達者。
2話ごとに登場する幽霊役の俳優たちも非常に良いし、シン・イランを取り巻く家族や敵対人物たちも、それぞれ存在感がある。
物語のベースとしては比較的単純なので、正直、展開自体は読める。
「はい、ここ泣くところですね」という流れも分かる。
でも、それでも毎回ちゃんと泣かされる。
悔しくなったり、あたたかい気持ちになったり、一緒に怒ったり。
見ている側まで感情をしっかり動かされるのは、やはり俳優陣全体の演技力によるところが大きいと思う。
あと、韓ドラオタクとして心をくすぐられたのが、『トッケビ』オマージュっぽい演出。
幽霊たちが心置きなく天へ消えていく場面だったり、武将のように大槍を構えるポーズだったり、「あ、これは絶対意識してるよね?」と思うシーンがちらほらある。
ああいう、“分かる人には分かる遊び”を入れてくるのも韓ドラらしくて楽しい。
死後、もし本当にこんなふうに、
残してきた後悔や誤解をきれいに解消してから旅立てたら、
それはきっと、とても幸せなことだと思う。
そんな少し優しい空想を、真正面からていねいに描いたドラマだった。
(Disney+ 2026年5月22日)
